「レントゲンの日記念」市民公開講座に共催

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2017-10-06

ヴィルヘルム・コンラート・レントゲン氏が1895年にX線を発見した11月8日を、欧米をはじめ多くの諸外国では「レントゲンの日」として毎年祝っており、多数のイベントが開催されています。日本においても、これまで日本医学放射線学会が記念行事を行っており、市民公開講座や座談会を開催してきました。今回は、日本医学放射線学会と日本学術会議が取り組んでいる“Japan Safe Radiology”の趣旨や取り組みなどについて紹介する場として、7名の先生からのご講演と総合討論が行われ、一般市民の方々や医療関係者が聴講しました。現在の医療費および画像診断業務の増大に対する医療資源の最適利用や、被ばく低減を主題とした安全性の確保、そして医療政策に関わる内容など多岐にわたるテーマについて取り上げられました。

JRC2018:2018年4月12日(木)~15日(日)で、第77回日本医学放射線学会総会の会長を務められる今井 裕先生(東海大学)が開会挨拶をされ、日本医学放射線学会理事長の本田 浩先生(九州大学)が理事長挨拶をされた後、各講演に移りました。

今井 裕先生は、「レントゲンの生涯」と題して、レントゲン氏の生い立ちからX線の発見に至るまでの経緯を紹介し、X線の発見は当時の専門家の間で大きな反響を呼び、その後様々なメディアで取り上げられることで、一般の人々の関心も高まり大きなブームとなったことを説明されました。

続いて、本田先生は、「『放射線医療“安心・安全”プロジェクト』について」をテーマに、放射線科医の役割が昔と今では変わってきており、より重要な任務を背負っていることを、あるテレビドラマを引き合いに出して説明されました。また、国民に対し、「安全」で「質の高い」放射線医療を、「均等」に提供するという、Japan Safe Radiologyのプロジェクトについて触れ、医療費をおさえること、画像診断装置が多く医者が少ない現状にAIを活用すること、被ばくの線量管理を行うことなど、現状の課題と現在進めている取り組みを紹介し、放射線科医が“みんなで”取り組んでいくことの重要性を強調されました。医療被ばくに関しては、その1/4をCT装置が占めることや、施設ごとに被ばく線量が大きく異なる現状について説明され、CT被ばく低減への取り組みの重要性を述べられました。

陣崎 雅弘先生(慶應義塾大学)は、「CTの技術進歩と臨床応用の現状」として、CTを中心に、開発からその後の技術進歩について年代ごとの背景も含めて詳しく説明されました。技術が進歩することによって、低侵襲で効率良く3D画像や4D画像が得られるようになり、診断能を向上させていること、また、CT装置が肺や心筋などの機能情報提供する検査として用いられるようになったことを述べ、被ばく低減技術を活用することによって将来的には核医学検査の一部を置き換える可能性があることを述べられました。

4番目に登壇した粟井 和夫先生(広島大学)は、「CTの放射線被ばく低減の取り組み」と題して、日本は人口100万人あたりのCT台数が世界でも群を抜いて多いことや、主にCT検査の平均的な放射線被ばく量などをデータで提示された後、小児CT検査のがんリスクに関する論議について現在の見解を述べられました。そのような中で、CT検査の最適化のための努力としては、各メーカーの低線量化技術の開発や診断参考レベル(DRL)を用いて各施設が患者線量の把握を行い、被ばく低減につなげる活動などを行っていることを説明されました。

続いて、「海外でのChoosing Wiselyについて」をテーマに、隅丸 加奈子先生(順天堂大学)が講演され、検査の精度は完ぺきではなく、“偽陽性(本来は陰性であるのに、誤って陽性と判定されるもの)” と “偽陰性(本来は陽性であるのに、誤って陰性と判定されるもの)” があり、患者は偽陽性の弊害を実感しにくい状況であることを説明されました。その上で、2012年にアメリカから始まったのが、「Choosing Wiselyキャンペーン」であり、画像検査のメリット(得られる健康)とデメリット(検査による損失)のバランスを考え、医療を賢く選択することが推進されており、日本においても2016年に活動がスタートしたことを説明されました。

休憩を挟んだ後、「画像バイオマーカーの開発と検査の標準化—日米の放射線学会におけるQIBAの取り組み—」と題して、井上 登美夫先生(横浜市立大学)が講演されました。バイオマーカーとは、客観的に人の体の状態を測定し評価するための指標であると説明し、指標がないと施設・装置などの違いにより、同じものを図ったとしても、臨床上の画像判断にバラツキが生まれ、診療の質の低下または医療経済上の無駄な高額支出につながってしまうと述べられました。このような問題から北米放射線学会が2007年にQIBAを発足し、画像の定量的なバイオマーカー化を進めており、その主な活動や決定内容についてご説明されました。

7番目の講演として、佐々木 健氏(厚生労働省医政局)が、「医療被ばくの適正管理に関する国の政策について」をテーマに、2017年4月から厚生労働省が開催している「医療放射線の適正管理に関する検討会」の概要を解説しました。同検討会は9月までに3回開催されており、回を重ねるごとに具体的な内容に触れて検討が進められているということでした。

最後に、今井先生と本田先生が司会をつとめられ、5名の講演者と日本医学放射線学会の副理事長である青木 茂樹先生(順天堂大学)も登壇され、講演の内容を振り返りながら総合討論が行われました。その後、参加していた一般市民の方も交えた質疑応答も行われ、がん検診などスクリーニングのあり方や、国の施策としてのがん検診推進と被ばく低減に関する質問が出されました。隅丸先生からは海外でのChoosing Wiselyの現状についても触れ、診療においても検診においても、各学会から出されているガイドラインをもとに実施されているとの回答があり、佐々木氏からは、がん検診の実施主体は市町村にまかされているが、国の指針に基づいて行われており、最新のエビデンスを元に定期的に見直しを行っていること、例えば胃がん検診については、バリウムだけではなく内視鏡も含めて実施するなど、幅を広げていることが説明されました。また、検診という新たな課題として非常に良い視点であることも示され、市民講座ならでは意見のやり取りがなされていました。

総合討論が終了した後、青木先生が閉会のご挨拶をされ、多くの情報を提供した市民講座は盛況のうちに閉会となりました。


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