がんの治療に特化した高度先進医療を提供陽子線治療における、同室CTの使用経験と有用性

2018-05-28

社会医療法人禎心会 札幌禎心会病院は、高度先進医療を提供することを使命として、バリアンメディカルシステム社のハイエンドリニアック装置であるTrueBeam STxと、北海道内の民間施設では初の陽子線治療装置(住友重機械株式会社製)を導入されました。Siemens Healthineersの自走式64Slice CT装置SOMATOM Definition AS Open RT-Pro Edition Sliding Gantryを同室に設置した陽子線治療システムは日本初となります。装置の使用経験についてお話をうかがいました。

晴山 雅人 センター長

Q. 陽子線治療は、リニアック(X線)と比べてどのようなメリットがあるのですか。

「X線との違いは、たとえば、耳鼻科関連でいうと、扁平上皮がんにX線は効きますが、悪性黒色腫や腺様嚢胞がんなどに対してはX線は効果がありません。そういうものに対して陽子線は非常に効果があるのです。また、頭蓋底や脊柱にできる脊索腫という疾患は、従来、放射線治療の適応ではなかったのですが、陽子線、炭素線ならば非常に効果があります。さらに大腸がんの再発に対しても効果的ですし、X線では比較的小さなものに限られていた肝臓がんも、陽子線であればかなり大きながんにも効果があります。X線の放射線治療では難しい組織や大きな腫瘍に対しても効くという、2つのメリットがあるのです。」(晴山 センター長)

舘岡 邦彦 医学物理科科長

Q. 毎回の治療前に、同室CTで撮影されるのですね。

「全例、毎回です。同室CTならば内部構造がしっかりわかりますから、骨に限定せず、組織合わせか、腫瘍合わせか、選択肢が2つできます。基本的には腫瘍合わせで行っています。腫瘍合わせをする際には、陽子線の飛程の問題、ビームが通過する組織の密度情報、組織形状の変化が多分に影響しますので、それらを補整します。」(舘岡 医学物理科科長)

Q. 治療装置と一体化されているコーンビームCT(CB・CT)よりも、同室CTの方が精度を高めるうえで有効だということでしょうか。

有効というよりも同室CTでないと、今お話しした情報はまったく見えません。CB・CTも進歩していると思いますが、散乱線の影響で軟部組織のコントラストに乏しく、アーチファクトの問題などもあり十分とは言えません。我々は毎回、腫瘍に必要な線量が入ったかどうか、逆に腫瘍周囲の重要な臓器に対しては線量が適切に制御されたかどうかを検証しています。CB・CTでは組織を分離することが不可能ですし、計画用CT画像もDIR*もできませんので、目的が果たせないのです。(舘岡 医学物理科科長)
*Deformable Image Registration:非線形変形による画像融合

舘岡 邦彦 医学物理科科長

Q. 同室CTのメリットと、CB・CTとの違いがよくわかりましたが、もう少しお聞かせください。

実際、かなり違います。陽子線治療は、非常に強固でロバスト性の高い治療でなければいけないと考えています。よく外部の方に、「同室CTを使うと時間がかかってしまいますよね」と言われるのですが、我々はまず同室CTポジションで患者さんをポジショニングして撮影し、すぐにカウチをビームポジションに移動します。それで3 分くらいです。その間に画像照合を行いますが、照合に3 分以上かかる場合もありますので、同室CTによるタイムロスはまったくないのです。(舘岡 医学物理科科長)

【インタビュー内容】

  • 陽子線治療の導入経緯についてお聞かせください。
  • 症例に合わせて、陽子線かリニアックかを選択するというわけですね。
  • シーメンスのCTを2台ご使用いただいています。全体のワークフローについてお聞かせください。
  • 今以上に精度を上げるために、ご要望があればお聞かせください。

など

<Siemens Future vol.34 P32-33抜粋/ 2017年11月21日取材>