ホワイトペーパー:  臨床検査室 ~ 医療システムの中に秘められた宝石

2018-08-27

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臨床検査室のサービスや技術は、患者経験や医師の満足度を向上させコストを削減しながらも患者アウトカムを向上し、長期的には病院の評判を高め、収益の強化につながることが示されています。しかし、臨床検査が持つ真の価値は認識されていないのが現状です。

 

 

エグゼクティブ・サマリー

ペイシェント・ジャーニー全体から見ても、臨床検査のサービスや技術は重要な要素です。しかし、いまだに臨床検査サービスや技術のもつ真のバリュー(価値)が認識されていないこともあり、医療機関にとってこの分野への投資は最優先として扱われていない、というのが現状です。

米国には、医師や臨床検査室ディレクターへの基礎調査、ケーススタディ、医師や病院経営幹部へのインタビューなど、3本柱からなる研究イニシアティブがあり、ヘルスケアシステムにおける検査サービスのバリューを実証するのに役立っています。
このイニシアティブは、以下のような指摘をしています。

投資規模は小さくてもバリューは大きい
調査報告の多くが、臨床的な意思決定の約70%が臨床検査の結果によって導かれています。たいていの場合、病院全体のコストうち、臨床検査の占める割合は5%未満です。

Siemens Healthineersがまとめた調査報告書”The Value of In Vitro Diagnostic Testing (2017)”では、患者および医師の満足度、患者の安全、病院の評判を向上させる重要な要素は、ターンアラウンドタイム(TAT:結果報告までの時間)であることがわかりました。この調査によると、救急の医師、検査室の管理者、および内科医の約3/4が、TATの改善が満足度と安全の向上に直接つながっていると認識しています。さらに、シカゴに本拠を置くSwedish Covenant Hospitalでは、臨床検査室に投資したことで、患者と医師の満足度が向上するばかりか、より多くの患者から関心を寄せられるようになった、と報告しています。

コストの削減
臨床検査室用の新しい技術を開発したり、それらを導入することは医療システム全体のコスト削減に貢献します。たとえば、米国のNews & World Reportがランキングを発表したように、トップレベルの医用技術をもつ病院の65%は受益者当たりのメディケア支出(MSPB)スコアが全米平均を下回っています2。さらに、Swedish Covenant病院 はTATを短縮できていることから、2002年~2016年にかけて技術分野のフルタイムの従業員数を減らし、20%以上のコスト削減につながったと報告しています。このコスト削減は、検査室のオートメーション化、プロセスの合理化、マニュアル作業を減らすなど、臨床検査室をアップグレードし、運用そのものを変えた直接的な結果と言えます。
 

イントロダクション

医療システム全体がバリューに基づくケア提供に移行している中、臨床検査の担う役割はきわめて重要なものといえます。疾病の有無や診断内容についての正確性を高めるだけでなく、患者経験を改善したり予後のサポートができるなど、クリニカルパス全体をモニタリングできることにあります4。さらに、複数の研究結果が示しているように臨床的な意思決定の約70%が臨床検査の結果に基づいており、それにかかる病院のコストは5%にも満たないということです1

患者の目に直接触れることはないものの、臨床検査室は患者・医療機関・政府のぞれぞれがコスト削減のメリットを享受できると、多くの調査結果が証明しています。臨床検査室は医療システムになくてはならないものであり、いわば医療システムの中に秘められた宝石とも言えるのです3

医療システム全体で臨床検査の重要性が高まるにつれ、検査室内の技術革新と、その技術の活用が不可欠になってきます。この動向は、2017年発行の”The Value of In Vitro Diagnostic Testing” において詳細な調査結果が記されています。これによると、米国の医療関係者300人を対象に、臨床検査が患者・医療提供者・医療システム全般にどのようなバリューがあるかを尋ねました。一例では、ERドクターと検査室管理者、病理学者の80%が、臨床検査室のオートメーション化に投資することが最終的に患者ケアを改善できる、と回答しています。
 

患者と医師の満足度を向上することができ、安全も強化

臨床検査室に投資することは、とりわけTATの改善を通じて、患者の安全性を高め、患者と医師双方の満足度を向上させる重要な要素であると証明されています。これは、"The Value of In Vitro Diagnostic Testing"の中でSwedish Covenant Hospitalのケーススタディとして紹介されています。

それによると、TATは医師と患者の満足度はもちろん、患者の安全性にも大きく影響すると、ERのドクター、内科医や総合医、臨床検査室の管理者らが回答しています。

シカゴに拠点を置くSwedish Covenant Hospitalで、ターンアラウンドタイム(TAT)を短縮する取り組みをしている間、採血の回数や入院期間も減少する二次的な効果が見られ、医師や患者の満足度向上につながる結果が得られました。そのため同病院では、迅速な診断と患者一人ひとりに適した治療を正しく見極めるなど、患者と医師のニーズを満たしコミットメントを果たせる検査室として、その能力を強化することができました。2001年から2017年にかけて、同病院はSTATサンプルのTATを55%短縮することができ、ルーチンサンプルのTATは49%短縮できました。

病院の評判を高め、パフォーマンスを加速する

臨床検査室を起点とする臨床面、財務面の改善としては、TATの短縮や満足度向上による患者の紹介が挙げられます。結果的に病院の評判を上げることや、競争力の強化につながっているのです。Swedish Covenant Hospitalでは、患者と医師の満足度を高める取り組みが病院の評判そのものを高めることになり、ひいては多くの新規患者の来院につながりました。

同病院の臨床検査室責任者 Susan Dawson氏はこのように述べています。「私たちは臨床検査室の収益性を高め、臨床的なアウトカムを向上させるための投資を行い、エラーを減らして品質を改善し、医師のニーズに沿って納期の短縮に取り組んできました」。

病院の評判や競争力を測るのは難しいことですが、Swedish Covenant Hospitalで実施した改善策のスコープとボリュームは重要なパフォーマンス指標となるでしょう。右上の表が示すように、同病院は外来患者中心型モデルに移行しています。これは業界動向と言える世界的な傾向で、同時に、この取り組みによっていかに病院の評判が上がったかという重要な事例でもあるのです。

Swedish Covenant Hospitalでは、5年間で外来患者が約9%増加し、病院の競争力強化にもつながりました。


臨床検査室への新技術の導入は、患者ケアを向上し、患者と医師の満足度を高め、最終的に財務状況を改善するということがSwedish Covenant HospitalとSiemens Healthineersのパートナーシップによって証明されました。

2002年、同病院はSiemens Healthineersとの長期にわたるパートナーシップをさらに拡大し、検査室設備及びプロセスの改善のための新技術導入プロジェクトを実施しました。

このパートナーシップを通じてSwedish Covenant病院は、臨床検査室のオートメーション化を実施、プロセスを合理化し、システム全体の手作業を削減するなど、臨床検査室業務を大幅にアップグレードしました。運用のさまざまな改革を経た結果、同病院は臨床検査室のパフォーマンスと効率の最大化を実現するに至りました。臨床的優位性の確立、財務実績と評判の向上、そして競争力を格段に強化することができたのです。

コストの削減、アウトカムは向上

臨床検査技術への投資による財務的および臨床的インパクトも検証されています。革新的な医療技術を取り入れた米国の病院は、受益者一人当たりのメディケア支出(MSPB)が全米平均を下回っています2。これは医療の進歩を採り入れ、技術集約的なケアを提供している病院は、政府の医療支出の削減目標に貢献していることを示唆しています。
医療系コンサルティングファームのAvalere社によると、米国のNews&World Reportが定義したトップテクノロジーを持つ医療機関の65%がMSPBの平均スコアが全米平均を下回っており、それ以外の病院が56%だったのと比較すると高いことがわかります。さらに、2015年に行われたAvalere社の調査では少なくとも有床数200以上の技術トップレベルの病院は、それ以外の病院と比較して平均MSPBスコアが低いことがわかっています(0.9794 vs.1.0033)。

The Value of In Vitro Diagnostic Testingの調査では、臨床検査技術への投資がコスト削減、収益の増加、患者ケアの向上につながると強く信じている医師が多いということが示されました(グラフ参照)。

技術投資に対する評価

Avalere社の調査(2015年)でトップレベルの技術を持つ5つの医療施設のシニアエグゼクティブに尋ねたところ、組織全体が臨床医と密に協力しあい、新しい技術を採用する際に重視する点としては以下のようなものがある、と回答しています。
1) 患者アウトカムの向上につながるもの、2)病院の利益と収益性にプラスの影響を与えるもの、3) 技術や手順について信頼性の高いもの、4) 患者紹介の際の影響力をもつもの。

この調査では、トップレベルの技術を持つ病院が新しい技術をケア提供に生かすまでに、評価、承認、管理という正式なプロセスを経ていることがわかりました。投資を評価する際には、以下のようなことが考慮されています。

  • 検査件数、プロセスなど全体的なボリューム増に対応できる技術
  • たとえコストの高い技術であっても、マーケットリーダーであるがゆえの技術導入とされ、それによって評判を高める一助となるような技術
  • その新技術を初導入し、かつ、その技術に基づく医療サービスを提供できる市場で唯一の存在となるようなもの
  • 特定の手技の収益性に関わる技術であったり、30日間のケアに影響を与えるもの、または部門や病院の年間予算に影響を与える技術
  • 新技術の「ハロー効果(halo effect)」と、術前・術後の検査、画像診断やその他のサービスなど、患者や家族が受けるもので、手技以外で収益増につながるもの
  • 複雑さを減らし医療資源の使用を抑えることでコスト相殺や節減につながること、回復期間や救急処置後のケアのパターンに影響を与えること、そして全体的な効率を高めることができるなど、革新的な技術の採用

結論
臨床検査室は、医師が患者の治療計画を正確かつ効率的に管理し、患者経験を向上できるような重要な役割を果たしています。また、エラーを減らし検査結果の品質を向上させ、医師のニーズを満たすなど、病院の収益性と臨床的卓越性を向上するために、なくてはならないものと言えます。

バリューに基づくケアに移行しているいま、臨床検査は医療システムの中に隠れた宝石として注目されています。革新的な臨床検査サービスや検査技術への投資は、医療機関が患者アウトカムを向上し、コストを削減し、医師と患者の満足度を高めるほか、長期的には病院の収益を高め、評判も高めることを可能にします。


ケーススタディ

ケーススタディ:Ankara Numune Training and Research Hospital
トルコ・アンカラにあるAnkara Numune Training and Research Hospitalでは、臨床検査室の効率を改善するために戦略見直しを行い、革新的な技術を採用する方針を固めたことで直接的なベネフィットが得られました。

調査概要:

  • 病院経営層は臨床検査室の効率を改善するために、現場に適用する戦略を再構築のうえ実施した。その後、臨床面やコストへの影響を12ヶ月間にわたって評価した。

調査結果:

  • 電子化された意思決定支援システムを使うことで、医師の処方行動が改善された。
  • 特定項目の検査が過度にオーダーされたとき、電子制御アラートを持つITシステムが臨床医と検査室の専門家に警告を伝える。これにより、検査をオーダーする医師とサービス提供をする検査室のチームが、協力し合うことの重要性を認識できるようになった。
  • 総合的品質管理がどのように検査室サービスを最適化できるかに焦点を当てた、組織としての戦略が重要。

最終成果:

  • 病院内に委員会を立ち上げ、臨床検査の用途と費用について臨床医に知ってもらう教育キャンペーンを開始した。
  • 同委員会は検査室へのテストオーダーシステムを検証しなおし、過度に行われている検査を発見。それを依頼した医師に過剰検査の可能性について注意を与えた。
  • 同病院は、前年比12.6〜85%の範囲で、検査受注件数を削減した。これにより調査期間の1年だけで、合計37万1,183ドルが節減できた。

ケーススタディ:Swedish Covenant Hospital
Swedish Covenant Hospitalは、臨床検査室を技術的にアップグレードするという投資により病院の効率的な運営をはじめ、低コストで優れたアウトカムを提供できるなど、財務面でも利益を上げることができました。オートメーション化のための改善は、有資格のスタッフが足りないことや、フルタイムのスタッフ(FTE)はさらに多くの検査件数を処理できることを明らかにしました。重要なこととしては、スタッフを削減してもER部門またはルーチン業務における緊急検体(TAT)テストには何ら影響を与えなかったということです。

「私たちは独立型の病院ですが、今後さらに成長・繁栄していくためには、競合となる大規模病院と比較して同レベルか、それ以上に効率的なサービスを医師や患者に提供できるようにならなければならないのです」と、Swedish Covenant Hospital CEOのAnthony Guaccio氏は述べています。

具体的にいうと、2002年 ~2016年にかけてTATは向上したものの、テクニカルエリア内のフルタイムのスタッフ数が減少したことで、20.48%のコスト削減をもたらしました。生化学、血液学、凝固および尿検査部門を網羅する日替わりのフルタイム技術スタッフと、検査室マネージャーを含む夜間シフトのためのラボ内すべての技術スタッフが含まれます。

さらに、2011年~2016年の間にSwedish Covenant Hospitalはフルタイムのスタッフ1人当たり12.28%増となる検査数の達成、スタッフ1人当たりが検査を完了するまでの時間は11.02%も削減できました。

「診療報酬が不透明な今、私たちが持っている労働力を維持しようとするなら、より効率的になる必要があるのです。これは非常に重要で、こういった検査装置は大いに役立っています」と、Guaccio氏は語っています。


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[1] Cadogan et al., 2015; Lippi et al., 2016; Plebani, 2015; Rohr et al., 2016; Sarata and Johnson, 2014

[2] "The Impact of Medical Technology on Medicare Spending", Avalere, Sep 2015

[3]"The Value of In Vitro Diagnostic Testing in Medical Practice: A Status Report", Rohr et al, 2016

[4] "Cost-Utility Analysis of Diagnostic Laboratory Test: A Systematic Review", Fang et al, 2011

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