デジタルツインからペイシェント・エクスペリエンスの向上まで

2018-12-20

アイルランドを代表する私立病院の1つ、ダブリンのMater Private Hospitalは、デジタル技術によるワークフロー・シミュレーションでプロセスを最適化。わずか数週間で理想的なインフラを構築し、ワークフローの改善を行いました。
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最適なワークフローを実現すべく、シミュレーションにより新しいレイアウトとインフラを実現しました。
ワークフロー・シミュレーションは、ワークフローの最適化、効率の向上、患者やスタッフの経験価値向上につながるよう、新しいレイアウトやインフラの設計を提案します。

Mater Private Hospital(MPH)はアイルランドでも有数の私立病院の1つで、クオリティの高い医療サービスを提供すると同時に最適な患者ケアを実践すべく、環境づくりにも力を入れてきました。とはいうものの、患者からの要求レベルは高度化し、臨床現場には複雑さが増し、インフラも老朽化したりスペースが不足するなど、年々、効率的な患者ケアの実践が難しくなりつつありました。医療技術の急速な進歩により、既存の医療機器を更新するというだけでなく、追加で新しい機器を導入する必要性も出てきていました。とりわけ深刻なのは、患者にとって診察の待ち時間が長くなる、中断される、遅延が起こるなど、ペイシェント・エクスペリエンスにネガティブな影響を及ぼしていたことでした。

こういった課題を解決するために、MPHとSiemens Healthineersが協力し、MPH 放射線部門のレイアウトとインフラを再設計しました。大幅な改善につながるとはいえ、部門全体のレイアウトを変更するには数か月、もしくは数年に及ぶ試行錯誤を要します。しかしチームは、プロジェクト全体にわたってワークフローをシミュレーションするなど、デジタル技術によるプロセス最適化により、わずか数週間で希望通りのレイアウトを導入することができました。

3Dリアル・アニメーションにより、ケア提供を変革するための鍵を見つけることができました。
3Dリアル・アニメーションにより、ケア提供を変革するための鍵を見つけることができました。

プロジェクトチームは、MRIやCTのワークフローをシミュレーションするため、実際の運用データを用いた分析を行う一方、これまでのレイアウトを見直して潜在的な改善点を見出しました。既存の配置における改善点や維持すべき点など、さまざまなヒントを得るべく、ワークショップを開き、ステークホルダーに聞き込みをしたり、プロセスをモニタリングするなど、1週間にわたって現場でのアセスメントを行いました。その分析結果に基づき、放射線部門とその内部のオペレーションについて、3Dのコンピューターモデルが作成されました。それを経て、新しい運用シナリオやレイアウトなど、さまざまな観点からテストができる、いわゆるデジタルツインが完成したのです。リアルな3Dアニメーションと定量的レポートによって運用シナリオを描き、即座に代替オプションを評価し、ケア・デリバリー変革のための最適なソリューションを見つけることができました。

MPHのPaddy Gilligan准教授(物理学者&放射線防護アドバイザー)

「二次元の設計図がリアルな3Dに、そして実際の4Dに変わっていくさまは、まさに圧巻でした。デジタルツインのおかげで、考えられうる中でベストと言える放射線部門の配置になりました」と、物理学者で放射線防護アドバイザーでもあるMPSのPaddy Gilligan准教授は語っています。「放射線医学でも、ますますバリューに重点が置かれるようになってきており、コストと同様にペイシェント・エクスペリエンスを重視することが大切です。今回、このような洞察を得られたことを、非常に心強く感じています」。

患者はワークフローの最適化による恩恵を受けるでしょう。

ケアを受けたい病院のナンバー1として認められるべく、MPHはさまざまな努力を重ねており、その中にはペイシェント・エクスペリエンスを改善するという項目もありました。インフラ設計をサポートする際に病院全体のレイアウトも変えることになり、患者にとってより快適な環境が創られました。ワークフローの最適化を通して検査能力を向上させると同時に、患者の待ち時間、CTやMRIのターンアラウンドタイムを短縮することにもつながりました。さらに、寝たきりや車いすの患者のケアを円滑に行えるよう、専用エリアの改善も行いました。

デジタルツインを活用することによってMPHは、設備レイアウトやプロセス最適化、将来的な運用などについて、意思決定に必要な最新のヒントを得ることができました。このアプローチは変革と変容のきっかけとなり、MPHはこの経験がスタッフと患者の双方にプラスの影響を与えていると好意的に受け止めています。


Mater Private Hospitalは1986年、ダブリンで開業しました。治療やケアのため、患者をMPHに紹介する専門家は年間200人以上にのぼります。2017年、MHPは有床数205、在籍医師及び看護師1300人、患者数は20万5,000人でした。


Stephanie Scharffは、Siemens Healthineersのエディターです。