医療のデジタル化をリードする4つの力

テクノロジーが世界の医療のかたちを変える

2018-08-20

テクノロジーはどのように医療を形づくり、今後どのように変えていくでしょうか。デジタルによる医療の変革は世界中で進んでおり、患者と医療提供者の双方に大きな影響を与えています。そこには、4つの特徴的なトレンドが見られます。

患者エンゲージメントの高まりとモバイル技術の向上

自分の健康管理に積極的に関わりたいという患者の数は増加傾向にあり、この増加には2つの要因があります。ひとつは、ヘルスケア業界がオンライン情報やモバイル用アプリ、パーソナルヘルスに関連するデバイスに対して投資を続けていることです。言い換えると、消費者エンゲージメントを健康や医療の分野で高めるのと同じで、最近の調査によるとプロバイダーとの提携、オンラインリソースの活用、テクノロジーへの信頼度が投資傾向の下支えとなっています1

McKinseyによると、Fitbit のようなウェアラブル端末から健康管理アプリに至るまで1,000社を超える企業がモバイル用のデジタル技術開発をしているように、モバイル技術の高まりは患者みずからが健康管理に関与するのをサポートしています2

医療現場で利用するウェアラブル端末をはじめ、デジタル技術の数々は身体機能についての重要データを取得したり、患者の状態を把握したり、より良いケアのためにプロセスを合理化するなど、さまざまな面で役立っています。また、データの統合、予測分析はもちろん患者の健康管理の方法や病院組織のあり方まで変えてしまう可能性を秘めています3。 

遠隔医療の成長

最近の報告書によると、遠隔医療の世界市場は2020年末までに340億ドル以上になると予測されています4
そのうち北米が世界市場の40%以上を占めるとされており、研究者らはその背景に、高齢化、慢性疾患の増加、ソフトウェア市場の急速な成長があると指摘しています。

その他の要因としては、入院患者の数を減らして入院期間を短縮するために、自宅療養中の患者をモニタリングするなど、今後の医療制度が目指すバリューに基づくケアへの移行が挙げられます。すぐれた医療ネットワークの存在も、遠隔医療のトレンドの一部と言えます。米国最大規模を誇る総合保健システムのKaiser Permanente 社によると、2015年時点でポータルサイト、バーチャル訪問、健康アプリなどを通じてオンラインでつながっている患者の数は、実際に病院を訪れた患者の数を上回りました5


AI(人工知能)の活用

初期の頃は、増大する患者データを認知コンピュータが分析し、患者ケアの質と価値を高めたり手術をガイドするなど、医療従事者のサポートをしていました。AI(人工知能)とは、コンピュータなどの機械が人間の特徴的な認知行動、つまり学習する、判断するといった能力を有することを指す専門用語です。これには、データを選別して学ぶ能力も含まれます。例としてドイツ・エアランゲン大学病院の婦人科医Dr. Peter Faschingによるものがあり、これは乳がんにおいてゲノムがどういう関わり方をしているかを国際チームと協力して研究を進めています6。Dr. Fasching は2000年以降、30億のDNA構成要素を持つヒト遺伝子のコードに着目し、次の段階ではこのデータを分析し、患者の役に立つ方法を見出そうと研究しています。

「普段利用するMicrosoft Excelシートには約16,000個の列が含まれていますが、DNA構成要素はゆうに100万を超え、それらを分析するのは ”想像をはるかに超えるレベル” です。私たちの目指すソリューションは、機械学習として知られるAIを用いてデータのパターンや規則性を認識し、そのデータから集められたさまざまな洞察を一人ひとりの患者に適用していくことです。最近の共同研究では、20万人以上の患者データを元に、70以上の遺伝子変異が乳がんリスクに影響することを発見しました。進歩の鍵は、このように ”知識の新しい次元” と、既存のがんについての知識との関連性を調べていくことなのです」と、Dr. Fasching は語っています。


ビッグデータから実用的な洞察を

医療システムにおいて相互運用性が欠けていること7は、技術的、財政的、文化的な理由からも大きな課題と言えます。米国病院連合(AHA)によると、自組織以外のシステムから患者情報を入手できる病院は、米国全体で4割程度8と言われています。相互運用性については、2月末にオーランドで開催されたHIMSS9での重要なトピックのひとつでした。たとえば、Siemens Healthineers は、HIMSS でイノベーションと協業を加速する新しいデジタルエコシステムを発表しました。このシステムは、データ統合、グローバル接続をはじめ、医療提供者へアプリやソリューションを提供します。

プラットフォーム上にデータがシームレスに統合されていることで、ソリューションプロバイダーはサービス創出から市場投入、提供までを効率的に行うことができ、最終的には迅速に医療提供者に届けることができます。たとえば、Siemens Healthineersのエコシステムを導入している医療機関は、画像データ、臨床検査データ、医療文書のデータなどを組み合わせて評価することができます。このような動向は、優れたディベロッパーを引きよせ、さらに優れたソリューションを生み出します。アプリや技術を提供するパートナーとして、Arterys、Dell / EMC、SecondOpinions.com、Stroll Health、TMC、3DSlicer、USARadなどがあり、今後ますます広がっていくでしょう。

モバイル技術、遠隔医療、AIの利活用はもちろん、相互運用可能なシステムを通じてこれらの情報にアクセスしたり分析したりできることこそ、未来の医療のかたちといえます。これらのデジタルツールは、医療の進化を表す希望の光なのです。


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1Scott, Greg. 2015 Survey of US Health Care Consumers. Deloitte. 2015.

2Atluri, Venkat; Cordina, Jenny; Mango, Paul; Rao, Satya; Velamoor, Sri. How tech-enabled consumers are reordering the healthcare landscape. McKinsey & Company. August 2016.

3Internet of Things Will Change How Hospitals Are Organized. Lux Research. April 5, 2016.

4Global Telemedicine Market. Mordor Intelligence. August 2015.

5Kaiser CEO: Telehealth Outpaced In-Person Visits Last Year. MHealthIntelligence.com October 11, 2016.

6Lindner, Martin “Data is the Only Way to Meet the Future Needs of Our Patients”. Siemens Healthineers,  February 3, 2016.

7Pelosi, Ray. Lingering obstacles block the path to interoperability. Healthcare IT News. February 6, 2017.

8AHA Annual Survey IT Database. AHA Data. 2015.

9Blockchain, Big Data, Interoperability Coming Up at HIMSS17. HealthITAnalytics.com. February 10, 2017.