尿試験紙法の妊婦検診における有用性

尿試験紙法は、妊婦検診において妊娠高血圧症候群や尿路感染症を早期に特定することに有用とされています。無候性細菌尿などの尿路感染症は流早産の危険因子ですが、細菌尿による蛋白の混入について全例で尿沈渣を行うことは困難です。

平成15年10月から平成16年3月まで大阪大学医学部附属病院 産婦人科の妊婦検診を受診した妊婦(妊娠12~41週、平均年齢30.5歳)に対して従来の尿定性試験紙で陽性を示した97の尿検体を再度クレアチニン補正が可能な試験紙(マルティスティックスPRO10LS)でスクリーニングを行ったところ、以下の結果が得られました。1

川崎医科大学 産婦人科 教授 下屋 浩一郎 先生
"マルティスティックスPRO10LSを用いるとクレアチニン補正によって正確な蛋白尿の診断と細菌混入の可能性を知ることができ、妊婦検診の効率化と診断精度の向上を図ることができます" 川崎医科大学 産婦人科 教授 下屋 浩一郎 先生

先生からのコメント

妊婦検診における目標として妊娠高血圧症候群の診断と流早産の予防があげられます。流早産の危険因子として無症候性細菌尿などの尿路感染があります。したがって、これらの診断のために尿検査は妊婦検診において重要な役割を担っています。
一方、従来の尿検査法では濃縮尿の影響や無症候性細菌尿のために正確な診断が困難で、より迅速で簡便な検査法が求められています。

マルティスティックスPRO10LSを用いるとクレアチニン補正によって正確な蛋白尿の診断と細菌混入の可能性を知ることができ、妊婦検診の効率化と診断精度の向上を図ることができます。

結果

半分以上の検体で濃縮尿による偽陽性を示していました(表1:54検体)。
クレアチニン補正を行うことで過剰な検査につながる偽陽性を除外でき、これらは経過観察において特別な加療を必要とすることはありませんでした。

表1
定性P/C比検体数
正常
異常、尿蛋白陽性
異常、尿中白血球陽性

54検体(27症例)
15検体(12症例)
28検体(19症例)

また、尿蛋白陽性をさらに下記のように分類できました。 

  1. 尿路感染症のスクリーニング
    試験紙法の尿中白血球を判断要素に加えることで無症候性細菌尿のスクリーニングが可能になることが示され、尿沈渣でも細菌が確認されました(表1:28検体)。
    全検体に尿沈渣を行う必要がなく、本当に必要な検体にのみ尿沈渣を実施することができます。
  2. 妊娠高血圧症腎症のスクリーニング
    蛋白定性 (+) 以上を呈したサンプル97検体のうち15検体(表1)が定性P/C比異常となり、その内の6検体が血圧により妊娠高血圧症候群の適用条件と一致しました。

本結果から、妊娠高血圧症候群を効率的にスクリーニングでき、適切かつ迅速な入院加療を行うことが可能になりました。 

1「試験紙法による蛋白/クレアチニン比の妊娠中の外来検査法としての有用性の検討」
大阪大学大学院医学系研究科 下屋 浩一郎 他 医学と薬学53巻1号 2005年1月