アレルギー患者様向け情報

その症状、実はアレルギー?アレルギー患者様向け情報

かゆみ、湿疹、花粉症、気管支ぜん息、皮膚炎など様々な症状を引き起こすアレルギー疾患。その原因となる物質やアレルギー発症のメカニズム、検査と治療など、患者さまに知っていただきたい基本情報をご覧いただけます。

どうしてアレルギーが起こるの?

スギやヒノキの花粉等が身体の中に入ってくると、異物を排除するメカニズムが働き始めます。その物質が次に入ってきたときにそれを排除するために、その物質だけに反応する特異的IgE抗体を作ります。特異的IgE抗体ができた状態を「感作」と呼びます。特異的IgE抗体は肥満細胞という細胞の表面にくっついて体内に存在しています。

この「感作」された状態では何の症状もありませんが、同じ物質(たとえばスギ花粉)が再び体内に入ってくると、特異的IgE抗体がそれを捕まえます。捕まえたという信号によって、肥満細胞が活動を始めて細胞の中にあるヒスタミンやロイコトリエンという化学物質(ケミカルメディエーター)を放出します。ヒスタミンは神経を刺激してくしゃみと鼻水を起こします。ロイコトリエンは血管を刺激して鼻づまりを引き起こします。

これらの反応は異物に対する生体の防御反応なのですが、遺伝的要因や環境要因により体内の免疫バランスが崩れることで症状がおこります。このことを「発症」と言います。

アレルギーの症状はアトピー性皮膚炎から気管支ぜん息・アレルギー性鼻炎に変化する

アレルギー症状は成長するにしたがって、自然に治ったり、また別の症状が出たりすることが特徴です。たとえば、牛乳や卵を原因としたアトピー性皮膚炎は小学校に入学する前に80~90%が自然に治ると言われていますが、一方、2~3歳頃に気管支喘息になり、学童期になるとアレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎になるケースも見うけられます。このように年齢と共に次々と症状が現れることをアレルギーの行進にたとえ、アレルギーマーチと呼びます。

アレルギーマーチ

アレルギーマーチは症状だけではなくアレルゲンも変化~卵・牛乳からハウスダスト・スギ花粉~

アレルギー疾患も、アレルギーの原因となる物質(アレルゲン)も年齢とともに変化します。乳幼児期には卵や牛乳といった食物性アレルゲンが中心ですが、成長と共に、ハウスダストやスギ花粉など吸入性アレルゲンが主体となります。

このアレルギーマーチをくい止めるためにも、正しい検査と診断が大事になります。自分で判断せずに、専門のドクターに相談しましょう。
 

どんなものがアレルギー?

アレルギー性鼻炎は、花粉を原因とする季節性アレルギー性鼻炎とハウスダストやダニなどを原因とする通年性アレルギー性鼻炎とに分類されます。

通年性アレルギー性鼻炎の原因

季節性アレルギー性鼻炎の原因

ハウスダスト
昆虫
ペット

ダニ
ガ、ユスリカ、ゴキブリ
イヌ、ネコ


春~夏
夏~秋

スギ、ヒノキ、シラカンバ
カモガヤ(イネ科)
ブタクサ、ヨモギ(キク科)

スギ花粉以外の原因
スギ花粉症と自己診断している患者様の多くがスギ以外にも原因を抱えています

意外と多い、スギ花粉以外の原因
鼻炎症状があり、スギ特異的IgE抗体陽性の患者様の70%はハウスダストにも感作していたという疫学調査の報告があります。また、同じ疫学調査の結果ではイネ科花粉やキク科花粉、ペットのフケなどにも40%の患者様が感作していました。

アレルギー症状を引き起こす植物は国内だけでも約60種類が報告されています。また、高温多湿の季節には主要な室内塵であるダニとカビが増殖しさまざまなアレルギー疾患を引き起こします。室内塵にはダニ、カビの他ペット(イヌやネコ)や昆虫(ガやゴキブリ)などが含まれます。

花粉症の症状はさまざま
くしゃみ・鼻水・鼻づまり以外にも、目のかゆみ、喉のイガイガ、皮膚のかゆみ、肌荒れ、下痢や熱っぽさといった症状が現れることがあります。原因を特定して対策を立てることが重要です。

原因回避による症状の軽減のためにも血液検査が有効
アレルギー患者にとって環境整備はメディカルケアの依存を軽減し、症状の改善に有意義な方法です。血液検査で原因を調べ、対策を行うことが症状緩和に効果的といわれています。花粉症がありなんとなく体調不良が続く場合など、また、小児では症状を正しく伝えられないこともあるので血液検査をすることで診断補助に役立ちます。

ギョウギシバ(イネ科)
ギョウギシバ(イネ科)

それってイネ科やキク科花粉症かも?
春のスギ・ヒノキ花粉症シーズンが終わっても夏に花粉が飛散するイネ科の植物や、秋が飛散シーズンのキク科の雑草にも注意が必要です。

  • 回避方法
    スギやヒノキなどの樹木花粉と違い、イネ科(ギョウギシバ、カモガヤなど:飛散時期5~7月)やキク科(ブタクサ、ヨモギなど:飛散時期9~10月)の花粉は飛散量も少なく飛散距離も短いため、飛散時期に空き地や河川敷など繁殖地に近づかないことで回避できます。また、家の周りに生えている場合は花の咲く前に除草します。

 

ハウスアレルゲン

昆虫などもアレルギーの原因に!
花粉のほか、昆虫など夏から秋のアレルギー症状の原因は多彩。ガは夏から秋にかけて多く出現し成虫はりん粉やりん毛など、幼虫でもフンがアレルギー性鼻炎や喘息の原因となります。ユスリカは死がいが乾燥して微細な塵になったものがアレルギー性鼻炎や喘息の原因に。

  • 回避方法
    ガ:照明器具の周辺、タンスの裏側など死がいが溜まりそうな場所をこまめに掃除しましょう。
    ユスリカ:死がいが網戸や窓枠に溜まります。マスクを着用して取り除きましょう。

秋特有のアレルギー症状
冷え込む前の季節、秋の衣替え時のハウスダストもアレルギー疾患が増える原因ともいわれています。

ハウスダストとは室内にたまるホコリ(室内塵)のことで、その主なアレルゲンはダニです。ダニは夏に大量に繁殖しますが、その死がいやフンが細かなチリになって空気中に飛散し10月頃にピークをむかえます。
春から夏の間、クローゼットや押入れにしまっておいた衣類や布団にも死がいやフンが付着しています。しまい込んでいたセーターや毛布などを出してそのまま使うと、アレルギー症状を悪化させることがあります。
ハウスダストに接触することで、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなど風邪のような症状や目・皮膚のかゆみ、肌荒れ等の、ダニが引き起こすアレルギー症状が現れることがあります。寝具や枕、ぬいぐるみなどでも繁殖するため、皮膚に触れるとアトピー性皮膚炎を悪化させることもあります。

  • 回避方法
    室温20~25℃、湿度50%以下に保つと繁殖が抑えられます。布団は天日に干して乾燥させ掃除機をかけます。掃除機は排気循環式を用いて週2回以上の掃除をしましょう。畳よりフローリングが望ましく、床に敷いたカーペットは取り除きます。
カビ(真菌)

冬のアレルギー原因はカビ(真菌)
高温多湿な夏に多く繁殖するカビ(真菌)ですが、暖房器具や加湿器を使う冬もカビによるアレルギーの症状が悪化しやすい時期です。カビ対策を怠らないようにしましょう。

  • 回避方法
    窓や壁の結露はこまめに拭き取ります。窓ガラスに触れるカーテンは特に注意が必要で、壁に密着したソファや家具もカビの温床となります。浴室や洗面所なども一年中高温多湿なのでよく換気をし、こまめに掃除します。カビを見つけたら固く絞った雑巾で拭き取ることが繁殖を防ぐポイント。カビ取り剤や防カビ剤も有効です。 

食物を摂取した時に、その食物に含まれるたんぱく質を体が異物として過剰に反応する事で体が傷つき、様々な症状を引き起こすことを食物アレルギーと言います。その症状は顔や腕に限らず様々な部分に現れ、症状も軽いものから命に関わる重いものまであります。

食物アレルギーの症状

  • 目:充血、痒み、目の周りのむくみ
  • 皮膚:痒み、じんましん、むくみ、赤くなる、湿疹
  • 口、のど:唇や口内、舌の違和感やはれ、のどのかゆみ、イガイガ感、声がかれる
  • 鼻、肺:くしゃみ、鼻水、鼻づまり、せき、ゼイゼイ、呼吸困難
  • お腹:腹痛、気持ち悪さ、嘔吐、下痢、血便
  • その他:食事後の体調不良 

 

小麦、エビやカニ等の甲殻類などを食べた後に運動をすることで蕁麻疹やアナフィラキシー症状を起こすことがあります。これを食物依存性運動誘発アナフィラキシーと呼びます。給食後に体育などで運動をすることが多い、小中高生に多く見られるため、学校で発症することがあります。

食物アレルギー

果物や野菜の中には花粉と同じようなたんぱく質が存在しています。花粉症の患者さんが花粉と似たタンパクを持っている果物や野菜を食べて発症する食物アレルギーをPFAS(ピーファス)と言います。
これらのたんぱく質は加熱することや胃で消化されることにより分解されるため、症状が起こる個所は比較的限定されており、唇や口の中がピリピリしたり、喉がイガイガするなど口から喉にかけて症状が起こる事から口腔アレルギー症候群(OAS)とも呼ばれています。
また、花粉症の薬(抗アレルギー薬や抗ヒスタミン薬)を使用している期間は、OASの症状が抑制されているため、原因食物を大量に摂取して重症化したという報告もあります。治療方法は原因とされる食物の回避ですので、このような症状に心当たりがある方は早めにアレルギー専門医を受診して、血液検査などで原因抗原を特定することが重要です。

花粉抗原との関連が報告されている主な野菜・果物
はじめは口や喉だけで起こっていた症状が、原因食物を食べ続けることで重症化したという報告があります。現在では多くの野菜・果物の特異的IgE抗体検査が可能になり、PFASの原因検索に役立っています。
シラカンバ、スギ、ヨモギ、イネ科、ブタクサの花粉症の方は以下の食材にご注意ください。

* 血液検査で特異的IgE抗体が測定可能な野菜・果物

花粉

野菜・果物

シラカンバ

バラ科(リンゴ*、洋ナシ*、サクランボ、モモ*、スモモ、アンズ、アーモンド*)
セリ科(セロリ*、ニンジン*)、マタタビ科(キウイ*)、ナス科(ジャガイモ*)
カバノキ科(ヘーゼルナッツ*)、ウルシ科(マンゴー*)、しし唐など

スギ

ナス科(トマト*)

ヨモギ

セリ科(セロリ*、ニンジン*)、マタタビ科(キウイ*)

イネ科

ウリ科(メロン*、スイカ*)、ナス科(トマト*、ジャガイモ*)
マタタビ科(キウイ*)、みかん科(オレンジ*)、豆科(ピーナッツ*)など

ブタクサ

ウリ科(メロン*、スイカ*、カンタローブ、ズッキーニ、キュウリ)、バショウ科(バナナ*)など

魚やエビ、イクラなどの魚介類による食物アレルギー
食物アレルギーには、魚やエビ、イクラなどを食べることによってアレルギー症状が現れる魚介類アレルギーがあります。乳児期の代表的な食物アレルギーといえば鶏卵、牛乳、小麦を主な原因とする即時型アレルギーですが、1歳を過ぎると魚卵、魚類のアレルギーが多くなり幼児期には甲殻類アレルギーも増えてきます。
マグロやサケなどの魚類、イクラやタラコの魚卵、エビやカニの甲殻類、イカ・タコの頭足類、ホタテなどの貝類を原因とした食物アレルギーの抗原検索には特異的IgE抗体検査が有用です。

魚介類アレルギー

加熱に強い魚介類のアレルゲン性
卵のように加熱によってたんぱく質が変性してアレルゲン性も低下する食品がある一方、耐熱性のたんぱく質が主要アレルゲンの食品もあります。魚類の代表的なアレルゲンであるパブルアルブミンとコラーゲンのIgE結合能は加熱に対して安定であるため、加熱調理した魚によってもアレルギーを発症すると言われています。
また、エビ、カニなどの甲殻類の主要アレルゲンであるトロポミオシンも熱安定性があり、加熱によるアレルゲン性の低減は期待できません。

検査と治療

ハウスダウト、花粉、卵、エビ等様々なアレルギー原因を調べることができる血液検査

体が異物に対して攻撃的な反応をする一つの原因として、異物に対する特異的IgE抗体があげられます。血液検査では、患者の血清の中に「何に」反応する特異的IgE抗体が「どのくらい」あるかを調べます。
現在では、191種類の原因物質(アレルゲン)に対する特異的IgE抗体を測定することができます。

食物アレルギーの診断

アレルギーを専門とする医療機関を受診して詳しく相談しましょう
子供が心身ともに大きく成長する時期に食事は重要な役割を果たします。自己診断でむやみに制限することは成長の妨げになります。食物アレルギーの診断は非常に難しく、専門医による詳しい問診や血液検査や皮膚テストによる特異的IgE抗体の検査、食物負荷試験により総合的に判断されます。また、子供の場合は成長とともに、耐性を獲得して食べられるようになるケースが多いため、定期的に診断を受けて、こまめに原因を見直してもらうことも重要です。

アレルギー性鼻炎の診断

アレルギー性鼻炎の検査には、アレルギーか否かを調べる検査と原因物質を調べる検査があります。アレルギー性鼻炎の診断においては、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状があり、鼻水の中に好酸球が証明され、症状と矛盾しない抗体(花粉症では花粉飛散時期と一致する抗体)が検出されれば診断は確定します。

  • 問診
    問診では、いつ症状がでるか、どんな症状か、アトピー性皮膚炎などの他のアレルギーの有無、家族歴など診断の基本となる情報を調べます。
  • 鼻鏡検査
    鼻鏡検査で直接鼻の中の状態を見ることで、副鼻腔炎、鼻ポリープ、鼻中弯曲症などの他の鼻の病気と区別ができます。
  • 鼻汁好酸球検査
    鼻汁好酸球検査は、その症状がアレルギーによるものか調べる一般的で大切な検査です。その他、血液による検査では血中総IgE抗体や血中好酸球を行います。
  • 特異的IgE抗体:アレルギーの原因を調べる検査です
    皮膚テスト:原因と思われる物質を皮膚に入れて、赤くはれる反応を見ます。
    血中特異的IgE抗体検査:血液検査で原因となる物質に対する抗体が血中にどのくらい存在するかを調べます。
    鼻粘膜誘発テスト:原因と思われる物質を鼻の粘膜につけて、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状がでるか、またはその程度を確認します。