変化を恐れず 自分たちで創る、新しい医療のかたち

~アジアNo.1の女性医療を目指す相良病院の取り組み~

2018-05-08

新病院の開設を2020年に控え、社会医療法人博愛会相良病院(以下、相良病院)の相良吉昭理事長には譲れない思いがある。それは、自分たちが大切にしてきた医療をずっと続けたい、むしろ、広げていきたい、というもの。相良病院の2代目である前理事長の代からずっと、医療の質、アウトカムを高めることはもちろん、患者ががんと向き合える環境作りに力を入れてきた。そのために、乳がん患者の子どもを対象にしたプログラム(CLIMB®プログラム)を導入したり、患者の家族のサポートも行ったりするなど、他の病院とは違う面にも意識的に多くの時間とコストを割いてきた。また、国内でも離島が多いことで知られる鹿児島という地域で、一人でも多くの人が乳がん検診やケアを受けられるようにと、離島・へき地医療の体制を整えてきた。

 

今や鹿児島県内の乳がん患者の7割以上 *1 が相良病院で何らかのケアを受けるまでになっている。
(*1 国立がん研究センター がん情報サービス 「全国がん罹患モニタリング集計 2013年罹患数・率報告」より算出)

このような取り組みが認められ、2014年8月には厚生労働省から全国で唯一、「特定領域がん診療連携拠点病院」の認定を受けた。本来は5大がん(肺がん、胃がん、肝がん、大腸がん、乳がん)を扱っている病院が「がん診療連携拠点病院」に指定されることが多いが、特定のがんに関して多くの診療実績を持ち、拠点的役割を果たす医療機関として、相良病院の乳がん診療やサポート体制が、国から制度として認められたのである。

社会医療法人博愛会の相良吉昭理事長
『私たちの病院を Siemens Healthineers のショールームにして一緒に理想的な女性医療のロールモデルを確立しませんか?』 社会医療法人博愛会の相良吉昭理事長はパートナーシップ契約に至った背景を振り返ります。

「高度成長期でしたらこのままで十分やれていたかもしれません。ところが、日本は少子高齢化、人口減という背景があり、経営面のコストを考えることはとても大切です。当時、私たちが大事にしている医療をずっと守り、続けるにはどうしたらいいのかという岐路に立っている時でもありました。とくに医療機器の購入は病院にとって最も高額な投資ですし、財務面からみると、患者サポートはやればやるだけコストがかさみます。これからは手術をしなくても治す治療法が確立されるかもしれません。また淘汰されていく病院も増えるでしょう。まさに病院が生き残りをかけて挑む時代になっているのです。その頃に出会ったのが Siemens Healthineers(当時のシーメンス・ジャパン)でした。いろいろ話をしていくうちに、私は、『私たちの病院を Siemens Healthineers のショールームにして一緒に理想的な女性医療のロールモデルを確立しませんか?』と提案しました。先進的な装置を導入した効率的な患者ケアを実践し、それを内外に発信していくことで、臨床面のみならず、社会貢献の意味も含んだお互いの理想の医療を一緒に作りあげていきましょう、となったのです」


これからの時代に対応した新病院建設の話が持ち上がった際、複数のメーカーが機器導入提案を出したが、最終的にはSiemens Healthineers に白羽の矢が立った。新病院をアジアでNo.1の女性医療の拠点にするという壮大な目標のもと、最先端の医療機器を導入し、グローバルレベルでの知識交流、及び共同研究プログラムなどを行いたいという理念が合致し、それを柱に2015年5月に両者のパートナーシップ契約が結ばれた。

それからの変化には目覚ましいものがある。

アウトカムが向上した例として、相良理事長は「一番大きかったのはMR-PET(Biograph mMR)の導入です」という。これまでの検診では見つからなかった全身の小さながんを早期に発見できることが多くなったという。さらに3Dマンモグラフィやハイエンド超音波装置など、イノベーションを重視した最先端機器を導入することで、「早く見つけて早く治療する」ことが、これまで以上に可能となった。

もともと乳がん治療では定評があった相良病院だが、画像診断の分野でもトップクラスと呼ばれるまでになった。国内外で豊富な経験と実績を持った放射線科のドクターを迎え入れたことがそれに拍車をかけたのだ。


「最先端の医療機器はもちろん重要ですが、それを使って読影する先生方も同じように大切です。このようにきわめて高度な体制を整えてこそ、クオリティの高い医療を実現できるのです」

また、相良病院は胃内視鏡検査や人間ドック、企業健診や自治体健診などの健診事業にも力を入れている。新病院の完成後は、既存の「さがらパース通りクリニック」一棟すべてを検診施設として運用する予定だ。病院には乳がん検診車があるが、離島を含む鹿児島県内全域を、時にはフェリーに乗って検診車が廻る。2016年8月には、Siemens Healthineers のデジタルマンモグラフィ1台と超音波装置2台の2機種を搭載した検診車が稼動を開始した。これは、日本人に多いデンスブレストに配慮したもので、希望や乳房タイプに応じて、その場で2種類の検査ができるようになった。

「これまでの競合は、『マンモグラフィだけで安く検診を請け負います』というセールストークですが、日本人はデンスブレストが多く、どうしてもマンモグラフィだけだと見落としの可能性がぬぐえません。私たちの検診は、コストは少し高いかもしれませんが、2つの機種で同時に検査し、専門の医師が読影するなど、クオリティで勝負しています。精度が高く高品質な乳がん検診は高い評価を頂き、県内外の多くの自治体や企業と契約を結ばせていただいています。超音波検診は個人の費用負担となりますが、住民の方から『お金をかけてもいいから、小さながんでもきちんと見つけてほしい』という要望があれば、その場で超音波の検診をします。個人の安心にもつながりますし、この検診車を取り入れてくれる自治体はどんどん増えています」

事実、相良病院はこのほど、(社)日本予防医学協会と業務提携をした。2018年1月から当協会が全国で請け負っている乳がん検診を相良病院の検診車で行うことになった。また同年4月より宮崎県の自治体検診を請け負うことが決定し、このほど3台目の検診車の導入が決まった。これにももちろん、マンモグラフィと超音波装置の2機種、計3台が搭載される。


2018年の診療報酬の改定により、医療機関が国から受け取る費用は今よりも下がると見込まれている。そのうえで、相良理事長は経営の方針を「鹿児島においては一か所にまとめて新病院で運営すること。地域を越えては提携やグループ化による連携を進めています」と語る。

具体的には、鹿児島市内の泌尿器がんの専門病院である新村病院と提携したこと。乳がんと前立腺がんでは、ホルモン剤や抗ガン剤など、使う薬や資材が同じなので、相良グループが一括購入をしているという。さらに2020年にオープンする新病院では、現在市内に点在している4つの病院(相良病院、ブレストセンター、パース通りクリニック、さがら女性クリニック)を一ヶ所に集約して効率的な医療を行うことも計画中だ。また、IMRT照射を行える放射線治療機2台をそなえた放射線治療センターを建設したり、大型医療機器の共同利用、薬や資材の一括購入など、コストを抑えられるなど魅力的なメリットもある。

一方、鹿児島県外では乳腺専門病院やクリニックとの連携、グループ化にとりわけ力を入れている。沖縄、香川にある病院及びクリニックをさがらウィメンズヘルスケアグループとして運営し、薬剤や資材の一括購入や健診センターの創設などを行っている。東京にある相良グループのオフィスには放射線の専門ドクターが在籍しており、香川や鹿児島や全国の企業など離れた施設で撮影された臨床画像がまとめて東京の専門ドクターによって読影されている。


「2015年に『相良病院と Siemens Healthineers が一緒になって、女性医療のロールモデルを作りましょう』とパートナーシップを結んでからものすごい変化と広がりがありました。グループの規模も拡大し、東京オフィスでの読影の仕組みも構築し、検診車のワークフローがきっかけで予防医学協会との業務提携があり、検診を受ける人は1万人以上増加しています。そして、近隣の病院との地域医療連携もあったりと、前向きな変化ばかり起こっています。組織の利益という面から見ると、Biograph mMR はかなり高額な装置ですが、他の病院との連携など、新しい事業展開が可能になりました。もともと利益ばかり追求するのではなく社会貢献もしたい、患者支援にリソースを注ぎたいという思いがありますので、これからも患者さんが病気としっかり向き合える医療環境を整えることをきちんとやっていきます。私たち相良病院のスタッフ全員に言えることですが、私たちには『変わることを恐れない』という特徴があります。Siemens Healthineers と組むことで自分たちのブランドが強くなっているということを実感している今、今後の変化もとても楽しみです」。

相良病院ではすでに、近隣アジア諸国からの検診ツアーを受け入れるため、必要な体制を整え始めている。スタッフも勉強会に参加したり、外国語の勉強を始めるなど、一丸となって取り組んでいる。アジアでNo.1の女性医療の確立を目指して、この病院が歩みを止めることはなさそうだ。


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