近年、CT検診による肺がん死亡率低下の効果が発表される(1)など、CT検査はその重要性が認められている一方で、被ばくについては一般撮影と比べると大きな値であるといえます。
CT装置にはこれまでも様々な被ばく低減機構が開発、実装されていますが、 1 mSvを下回るような線量でコンスタントに臨床上耐え得る画像を提供することは困難でした。
CARE Dose4D: 被検者の体格や撮影部位に合わせて最適に管電流を調整
X-CARE:放射線感受性の高い部位に対する被ばくを選択的に低減
CARE kV: 被検者の体格や検査内容に応じて最適な管電圧を設定
SAFIRE/ ADMIRE: Rawデータを用いたモデルベース逐次近似画像再構成法
Adaptive Dose Shield: スパイラル撮影の開始と終了における無効被ばくをカットする可動式コリメータ
UFC (Ultra Fast Ceramic) シンチレータ: 自社開発のX線高感度素子
Stellar Detector: 電気ノイズ低減のためアナログ回路を排除したフルデジタル検出器
一般的なCT装置に搭載されているBowtie filterなどの付加フィルタに、さらに可動式のTin（Sn, スズ）filterを加えて大幅にX線スペクトルを変調し、スペクトルの重心を高エネルギー側へシフトさせます。
これにより、画像化に寄与しない無効被ばくを大幅にカットするだけでなく、線質硬化（ビームハードニング）に起因するアーチファクトを抑える効果も得られます。
AAPM（The American Association of Physicists in Medicine：米国医学物理学会）のCT Lung Screening standardizationworking group が提示した推奨プロトコル(5)では、逐次近似画像再構成法（IR）を使用した各CTメーカーのハイエンド機での値が1.6~2.7 mGyであり、IRに加えてTin filterを用いたSOMATOM Forceのプロトコルのみ、0.5 mGyとなっています。
Tin filter technologyを応用した低線量撮影の可能性は、肺がんCTスクリーニングだけではありません。ICRPの報告において水晶体被ばくのしきい値が大幅に引き下げられたことは記憶に新しく、水晶体を含む眼窩・副鼻腔への適応も進んでいます。
その他、これまでも高管電圧の利用が有効とされていた腱や、さらに靭帯の描出といった分野でも力を発揮しています。また、本撮影が低線量化していく中で、Topogram（位置決め画像）の線量の占める割合が相対的に大きくなってきており、これを低減するためTopogramにもTin filter technologyを活用しています。
その他、Tin filterによってスペクトル帯域幅を狭小化することで線質硬化（ビームハードニング）を抑制し、CT値変化の直線性を高める効果があり、定量評価にも力強い味方となります。最近では冠動脈の石灰化スコア撮影の低線量化の一手としても利用されています。このように、Tin filter technologyは、新たなスタンダードとなる可能性を秘めた技術として、期待を集めています。
Chronic ankle pain. Ankle CT scan with Tin Filter.
CTDI vol 3.34 mGy and DLP 39.0 mGy cm
Courtesy of Medical University of Vienna, General Hospital AKH, Vienna, Austria
